オーディオ用スペアナの作例を調査すると、BPF回路や専用ICと、マイコンを組み合わせたものが多いようです。 これらには、ソフトウェアやアナログ回路の知識が要求されるため、 私のような初心者にとっては決して楽なものではありません。
そこで今回は、Rohmのスペアナ用バンドパスフィルタである BA3830Fと、 Texas InstrumentsのLEDドライバICである LM3916(LM3915Nでも可) を組み合わせるだけの簡単なスペアナを自作しました。またフリーのKiCadでプリント基板を設計し、実装技術の未熟さを補いました。
なお、2017年5月時点で、BA3830FもLM3916もディスコンという残念な状況ですが、せっかく作ったので公開します。 今の所、これらのICは下記で入手できるようです。
(※)コストパフォーマンスが良いため。ElecrowやFusionPCBといった安価なプリント基板製造サービスでは、10cm×10cm×10枚で10ドル以内。
プリント基板のサイズが10cm×10cm以内に収まるように、電源基板(Power Board)とLED基板(LED Board)に分割しました。
本基板には、電源回路やバンドパスフィルタ用IC BA3830Fの周辺回路を搭載しました。
ACアダプタから9Vを供給し、LEDの駆動用電源とします。またレギュレータICでBA3830F用の5Vを生成します。LEDの数は計60個と多く、電流の急激な変化が予想されるため、9Vラインに100uFをぶら下げています。
3.5mmステレオジャック(J1)で受けたステレオ音声信号を、2連ボリューム(VR1A,VR1B)に通した後、抵抗R1およびR2でステレオ→モノラルにし、 BA3830FのLINE IN端子(pin4)に入力する構成となっています。 また本ICにはアンプが内蔵されており、LINE NF端子(pin3)に抵抗R5を取りつけゲイン調整が行えます。抵抗値は現物合わせで決めました。
BA3830Fには2系統の入力(LINE信号,REC信号)があり、LINE信号を6バンドに展開しアナログ出力する機能と、REC信号の音量レベルをアナログ出力する機能があります。 今回はREC信号の系統を使わないので、そのための処置として、REC NF端子(pin5)とREC IN端子(pin6)を接続(※1)したり、 REC LEV端子(pin11)を抵抗R6を介してGNDに落としたり(※2)しました。
(※1)未使用のアンプ部を安定化するためであり、ボルテージフォロワを構成し、REC_LEV(pin11)を0Vに落ち着かせることでノイズ飛散を防ぐ。
(※2)同じく未使用のアンプを安定化するためであり、何らかの理由でREC_LEV(pin11)が浮いた場合でも、GND電位となるようにする。
出力f01~f06は、入力信号が6バンドに展開された信号であり、それぞれ0V~4.2Vmaxのアナログ値を取ります。 この信号を後述するLED基板に供給します。出力信号にぶら下がっているC4~C9は、信号のバタツキを調整するために回路パターンを用意しましたが、 実験した結果、実装の必要はありませんでした。
本基板には、LEDドライバICのLM3916や、秋月などで販売されている10ポイントのLEDアレイを搭載しました。
BA3830Fの出力信号をLM3916に入力し、LM3916が10ポイントLEDをドライブする構成です。 上図は1バンドについての回路であり、これが6バンド分必要です。
LM3916の扱いについては、『昼夜逆転』工作室さんのページが詳しいです。 LEDの電流\( I_{LED} \)およびフルスケール電圧\( V_{REF} \)(バーが全点灯する電圧)は、抵抗R8およびR9で設定しています。 今回はR8=3.3kΩ、R9=5.6kΩとし、データシート通りに計算すると、以下となります。
注意事項としては、\( V_{REF} \)を、BA3830Fの最大出力電圧(4.2V)よりも小さくする必要があることです。 \( V_{REF} \gt 4.2\mathrm{V} \)としてしまうと、どんなに大きな音声信号を入力(※)しても、LEDが全点灯しないことになります。
(※)もちろん定格内で
フリーのKiCadで設計→Elecrowに製造を投げる、といういつものパターンです。BA3830Fを除くとリード品が中心であり、ピンピッチも広いため、特に課題は無かったように思います。 強いて言えば、LEDの配線が面倒臭かった、という事でしょうか。
スモークブラウンのアクリル板に穴を空け、M3の高ナットとボルトで基板を固定し、 フォトスタンド用の金具(例1,例2)を 取り付ければ終わりです。
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