「オーバードライブ・リカバリ」という言葉を全く知りませんでした。メモをしておきます。
オシロスコープの垂直ビット数不足を補うために、波形をオフセットしたりレンジを拡大したりすることがあると思います。例えば矩形波の過渡応答を見る場合です。このとき波形の上下をクリッピングさせ、画面外に出してしまうと、図のように波形が歪みます。この現象を「オーバードライブ・リカバリ」と呼ぶようです。
手持ちのオシロスコープ RTB2004では、垂直レンジ100mV以下で顕著でした(1:1プローブの場合)。
対策としては、波形の上下を画面内に入れて測定し、拡大機能を使うこと以外に無いようです。Keysightの資料(登録が必要です)では、「オシロのアベレージ機能を使い、見かけ上のダイナミックレンジを上げた上で、拡大機能を使う」という対策が紹介されています。ハイレゾモード(サンプルレートを犠牲に垂直分解能を上げる)を使うことや、高分解能のADCが搭載されたオシロを使う事も有効だと思います。
参考資料
- AD8601のデータシート(Analog Devices)
- オーバードライブ・リカバリ時間のことを、「過負荷の信号からのリカバリのときに、アンプの出力が電源レールから離れるために要する時間」と説明しています。ダイオードの逆回復時間と類似した現象でしょうか?
- シグナル・インテグリティ:本当に検討すべき重要なファクター(Tektronix)
- 資料のP6に、オーバードライブ・リカバリについての記述があります。TekのMSO/DSA/DPOシリーズでは、100psで15divも回復するようです。さすがTektronixですね。
- Teledyne Lecroyの動画
- 以下の2つの動画を見れば、現象をよく理解出来ると思います。
オーバードライブ・リカバリ特性に優れたオシロスコープ
各メーカのオシロスコープをざっと見ましたが、オーバードライブ・リカバリ特性が明確に規定されているものは見つかりません(あれば教えて下さい)。以下のモデルはオーバードライブ・リカバリ特性に優れているようです。
- R&S RTO2000:仕様に記載はないが、メーカの方が仰っていた
- RIGOL MSO/DS7000:データシートにオーバードライブ・リカバリ時間の向上について記載あり
- TekのMSO/DSA/DPOシリーズ:本文中でも紹介した資料のP6に記述有り。具体的なモデル名までは不明。
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