YAMAHA MU2000の修理:電解コンデンサ交換

1.概要

YAMAHAのXG対応MIDI音源「MU2000」の電解コンデンサ交換作業について記録しておきます。
他の機種については、以下を参照して下さい。

2.分解

MU2000では、3つの基板「DM(メイン)」「SS(カードリーダー)」「UD(USB・S/PDIF)」に電解コンデンサが搭載されているので、分解してこれらの基板を取り出します。

まず、本体から電源プラグが抜かれていることを確認した上で、下図○印箇所のネジを外し、筐体のカバーを開けます。プラスドライバー2番が必要です。筐体をひっくり返して底面を上にし、カバーを筐体背面の方向にスライドさせると良いです。

カバーを開け、SS基板とUD基板の固定ネジを外します。プラスドライバー2番が必要です。なお、DM基板に装着されているボタン電池(CR2032)は経年劣化で液漏れするため、はんだ作業前に取り外しておきます。作業後に新品に交換します。

さらに、SS基板とフロントパネルの固定ネジを外します。筐体の背面側から見て、下図の○印がネジです。奥の方にあるため、柄の長いプラスドライバー1番が必要です。私はVESSELのNo.610(+1×150)を使用しました。このネジを外すとSS基板がフリーになるので、作業が楽になります。

そして、基板間のコネクタ類を外します。コネクタの中には、ロックを解除してケーブルを抜くものと、基板に直付けされており取り外し不可のものがあるので注意します。以下の図を参考にして下さい。組み立て時にケーブルの向きを間違えないよう、写真を撮りつつ作業するのが良いです。なお、DM基板-UD基板間のコネクタの一部は、下図4枚目の通り、うまく取り外すことができませんでした。

最後に、DM基板の固定ネジを外します。プラスドライバー2番を使います。これでDM基板がフリーとなり、筐体から取り外すことができます。以下の通り分解しました。

3.電解コンデンサの選定

次の基準で選定しました。

  • Digi-Keyで入手可能(2021/08/08時点)
  • なるべく同形状、同耐圧、同容量
  • 105℃品
  • 低インピーダンス品ではないもの
メーカ標準部品 交換用部品 個数 容量 耐圧 外径φD 高さL
メーカ 型式 メーカ 型式 [μF] [V] [mm] [mm]
Nichicon 不明 Nichicon UUQ1C221MCL1GS 2 220 16 8 10
不明 不明 Nichicon UUQ1C470MCL1GB 7 47 16 6.3 5.4
不明 不明 Nichicon UUT1C100MCL1GS 32 10 16 4 5.8
不明 不明 Nichicon UUT1H4R7MCL1GS 7 4.7 50 5 5.8
不明 不明 Nichicon UWT1C220MCL1GB 4 22 16 5 5.4
不明 不明 Nichicon UWT1H010MCL1GB 4 1 50 4 5.4
Nichicon 不明 Panasonic EEE-HBE101UAP 1 200 25 8 6.2
不明 不明 Rubycon 16SKV100M6.3X5.5 7 100 16 6.3 5.5
Rubycon 16YK470M8X11.5 Rubycon 16YXJ470M8X11.5 2 470 16 8 11.5
Rubycon 25YK1000M10X20 Rubycon 25YXJ1000M10X20 2 1000 25 10 20
不明 不明 Wurth Elektronik 865230640002 2 0.22 50 4 5.5

詳細なリストはこちら(Googleスプレッドシート)。「ファイル」→「ダウンロード」 でダウンロードできます。

Digi-Keyのカートはこちら。1台分ちょうどの電解コンデンサです。2021年8月現在、世界的な部品不足の影響で、タイミングによっては在庫が無い場合がありますので、ご了承下さい。

Digi-Keyに在庫があるものを選定したので、コンデンサのシリーズがバラバラになっています。面実装部品はニチコンのUWTシリーズ、ラジアルリード品はルビコンのPXシリーズに統一したかったのですが…。なお、面実装コンデンサは型式が不明のため、ひとまず、全て汎用品(低インピーダンスなど特殊仕様ではないもの)で代用しています。取り外したコンデンサをSANWAのLCRメータで測定したところ、そこそこESRがありましたので、低インピーダンス品では無いようです。

4.電解コンデンサの交換

コンデンサを交換します。注意点は以前の記事「Roland SC-88Proの修理:電解コンデンサ交換」と同様です。交換が完了したら、耐圧・容量・極性をチェックし、分解と逆の手順で組み立てます。

MU2000は面実装タイプのコンデンサが多いため、取り外しにはHAKKOのホットツイーザーが便利でした。コネクタ近くのコンデンサなどツイーザーが入らない箇所も多くあり、その場合は先の曲がったJ型のこて先(T18-BR02)とはんだごて2本を使い、うまくコネクタを避けて取り外しやはんだ付けをする必要がありました。

5.動作確認

内蔵デモソングの「Is it really Love? light mix」を鳴らしてみました。聴いた感じでは、問題は無さそうです。同時代のGS音源と比較して、頭一つ抜けていますね。

次に、テストモードを実施します。
[PLAY]キーと[MUTE/SOLO]キーを押しながら電源を投入すると、テストモードに入ります(参考サイト→YAMAHA/KORG/Roland TESTMODE LIST)。しばらく待つと以下の画面になるので、[SELECT←][SELECT→]キーで項目を選択し[Enter]を押すと各種テストが開始されます。エラーが生じるとerrと表示が出ますが、[EXIT]キーで脱出できます。

6.その他の部品

ボリュームやロータリーエンコーダ(ジョグダイヤル)は、MU128/MU1000/MU2000で共通のようです。

ボリューム

ボリュームは、Alps RK09K12A0シリーズのようです。ただしメーカーページを見ると、本機に使用されている2連ボリュームタイプのラインナップがありません(おそらく製造中止)。なお、本機1台につきボリュームは2個搭載されており、[A/D INPUT]ノブが50kΩ、[VOLUME]ノブが10kΩのモデルです。

ロータリーエンコーダ(ジョグダイヤル)

ロータリーエンコーダは、帝国通信工業 REB161PVBのようです。ただしDigi-KeyやMouserといった通販サイトには登録が無く、入手性が悪そうです。eBayにならありますが、新品が届くかは不明です…。

ロータリーエンコーダの分解清掃については、「NOZ’s Stylish Sound♪」さんのページが詳しいです。筆者もこちらの記事通りにメンテナンスし、ノブを回しても数字が変化しない不具合を解消することができました。以下の通りです。

コメント

  1. sceic より:

    Rotary Variable Resistor:RK09K12A0

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