Maker界隈では有名なFusionPCB(Seeed)に、プリント基板を発注してみました。日本語サイトは最近出来たようです。発注方法などはネット上に多くの情報がありますので、ここでは次にフォーカスしようと思います。
- スルーホールのメッキ有無(PTH, NPTH)の指定方法
- 発注~到着まで
- 基板の品質
1.スルーホールのメッキ有無の指定
発注時に迷ったのが、PTH(メッキ有りスルーホール)とNPTH(メッキ無しスルーホール)の指定方法です。下記のFAQの通りにやれば良いようです。
How can i do if i do not required to make plated through holes?
Plated holes:
Circuit layer: holes have copper
Solder mask layer: holes have openingsNon-plated holes:
Circuit layer: holes have no copper
Solder mask layer: openings don’t matter
FAQに従い、ガーバーデータ上で、
- PTH→穴を銅箔で覆い、穴上のソルダーマスクを指定する(レジストを剥がす)
- NPTH→穴の銅箔を剥がす。ソルダーマスクの有無は関係なし。
とすればOKです。
また、メッキの有無でドリルファイルを分ける必要はあるか、と問い合わせた所、「ドリルファイルは1つにまとめても、2つに分けてもよい。」とのことでしたので、今回は2つのファイルに分けて発注しました。
※ガーバーデータの生成方法については、fusionpcb.jpのよくある質問が参考になります。私はKiCadを使っており、こちらの記事に従って出力しました。
2.発注~到着まで
今回は同じアートワークの基板を、10枚ずつ、2種類の仕様で発注しました。値段と主な仕様は次の通りです。
■青レジスト基板(HASL):4.90USD
外形 | 層数 | レジスト色 | 表面処理 | 銅箔厚 | 板厚 | 最小穴径 | パターン幅/間隔 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
64mm×67mm | 2 | 青 | HASL | 1oz. | 1.6mm | 0.3mm | 6/6mil |
■黒レジスト基板(ENIG):29.9USD
外形 | 層数 | レジスト色 | 表面処理 | 銅箔厚 | 板厚 | 最小穴径 | パターン幅/間隔 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
64mm×67mm | 2 | 黒 | ENIG | 1oz. | 1.6mm | 0.3mm | 6/6mil |
100mm×100mm以内であればとても安価になるので、プロトタイピングに大助かりです。
この条件で発注したところ、次のスケジュールで動きました。
2017/08/14(月):発注完了
2017/08/15(火):ガーバーチェック終了、製造開始
2017/08/25(金):発送
2017/08/27(日):到着
※発送にはDHLを使用
他社のサービスに比べ、製造スケジュールは遅めですが、こんなものでしょう。
FusionPCBはシンガポール経由になるので輸送が遅い、という情報がネットにありましたが、
今回は香港経由になり、発送から到着までは速かったです。改善されているようで好印象です。
3.基板品質
レジストが青と黒の2種類を発注しましたので、それぞれを比較します。
結論から言うと、青レジストの基板は問題ありませんでしたが、残念ながら黒レジストの基板は10枚中7枚に問題がありました。
以下の写真では敢えて、一番悪い状態のものを選んでいます。
全体
シルク
青:特に問題はありません。印刷も鮮明で読みやすいです。
黒:パッドの上に被っています。これははんだのノリが悪くなるのでNGです。デザインルールを守り、シルク-パッド間のクリアランスは確保しているのですが…。
ちなみに、シルクがパッドに重なりそうな箇所は、FusionPCB側で余裕をもってシルクカットしているらしい(明確なソースは見つけてない)のですが、ズレが大きすぎると吸収できませんよね…。
スルーホール
丸穴→ドリル径0.6mm, 外径0.95mm
長穴→0.8mm/2.2mm
青:特に問題はありません。
黒:丸穴がズレているため、アニュラリング(スルーホールのパターン幅)が細くなり、パターンが切れそうです。
デザインルールを守り、アニュラを0.15mm以上にして設計していたのですが、もっと太めにしておくのが良さそうですね。
表面実装用パッド
0.8mmピッチのQFPパッドの写真です。
青・黒ともに、レジストにズレが見られますが、許容範囲内だと思います。
ロゴと絵
予想より綺麗な仕上がりです。線(レジスト)が崩れている箇所がありますが、元々デザインルールを度外視している部分のため、仕方の無い所ではあります。
余談ですが、もとの絵は↓に投稿しています。
その他
黒レジスト基板のうち1枚だけ、ベタGNDの一部が露出していました。レジストが剥離した状態でメッキされたのでしょうか。これはショートを引き起こす可能性があるのでNGです。
4.総評
安価で使いやすいと思います。複雑な回路の試作には重宝するでしょう。
ただし、「穴・シルク・レジストのズレありき」で設計するのが良さそうです。メーカーのデザインルールよりも余裕を持たせると、問題が出にくくなると思います。(メーカーのデザインルールって何だろう…)
また、ロットによる品質のばらつきは大きいかもしれません。今回の場合、青レジストは良品でしたが、黒レジストは10枚中7枚が不良でした。届いたらきちんと検品した方が良いです。不良品については再生産して頂くよう、お願いしている最中です。
2017/8/29追記:再生産してもらうことになりました。到着したら、本記事に追記します。
2017/9/30追記:再生産の経過について、記事を書きました。
5.余談
基板の撮影にはUSBマイクロスコープと、CameraViewer(橋本 直さん)を使用しております。
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